道具の話をすると長くなります。でも、道具について話さずにこの店の仕事を説明するのは難しい。ゾーリンゲン製の鋏と、昭和期の国産ストレートレザー。この二つが、当店の仕事の基礎にあります。

ゾーリンゲンとは

ゾーリンゲンはドイツ北西部の都市で、刃物の産地として知られています。鋏、ナイフ、カミソリの製造が盛んで、品質の基準が高い。当店の創業者・田中 誠一座の「橘理容院」に勤めていた頃から使い続けているメーカーで、現在も同じモデルを使っています。廃番になる前に一本確保するため、数年に一度まとめて取り寄せます。

鋏の研ぎについて

鋏は使い続けると刃が鈍ります。切れ味が落ちた鋏は、髪を切るのではなく押しつぶします。当店では年に一度か二度、大阪の研ぎ師・岡本さんに送ります。岡本さんとは田中 誠一からの付き合いで、刃の角度と仕上げの細かさを信頼しています。研ぎから戻った鋏は、新品に近い切れ味になります。

昭和期の国産ストレートレザー

ネックシェーブに使うストレートレザーは、昭和期に製造された国産品です。現在は同じ品質のものが手に入りにくくなっています。刃の薄さと柔軟性が、現代の製品とは異なります。大切に使い、定期的に革砥で整えています。

道具を替えない理由

新しい道具が悪いわけではありません。ただ、長年使い込んだ道具は手に馴染んでいます。持ち方、角度、力の入れ方が自然になっている。替えると、その感覚を一から作り直す必要があります。仕上がりに影響が出る期間が生まれます。お客様にその期間を経験させるのは申し訳ない。だから、替えられる理由がない限り替えません。

私たちの歩みと道具の話は、店舗の「私たちについて」のページにも書いています。